一般的なPC/AT互換のパーソナルコンピュータは、標準ではサウンド機能を持ちません。 効果音を出したり、音楽を演奏させるためには、なんらかのサウンドカードを追加する必要があります(現在では最初からサウンドカードを搭載しているのが一般的ですが)。
PC用のサウンドカードの中でトップシェアを占めるのが、クリエイティブ・ラボのSound Blaster シリーズです。 特にSoundBlaster 16はメーカー製のPCでも多く採用された最も一般的なサウンドカードでした。 SoundBlaster(表中では略してSB))シリーズには、大まかに言って次のような種類があります。 これらの型番に加えて、拡張メモリソケットやIDEコネクタを省いたりしたValueモデルなど数々のバリエーションがあります。
カード名 | チップ | シンセ音源 | 備考 |
---|---|---|---|
SB16 | FM音源のみ | ISAバス | |
SB AWE32 | SB16相当+Emu8000 | WaveTable音源32音 | ISAバス |
SB AWE64 | SB16相当+Emu8000 | FM音源+WaveTable音源32音+物理モデル音源32音(ソフト) | ISAバス(AWE64DはPCI) |
Ensoniq Audio PCI64 | Ensoniq ES137x | WaveTable音源32音 | PCIバス・SoundFont不可 |
SB Live! | Emu EMU10K1 | WaveTable音源32+32音。4スピーカー対応 | PCIバス・EAX対応 |
ビデオカード、SCSIインターフェースカード等がISAからPCIへと移行していく中で、サウンドカードだけはISAバスのカードが主流でした。 しかし、リアルタイムに複数のオーディオストリームの位置や動きを表現する3Dサウンドを合成処理するような高度な表現を実現するには、ISAバスでは転送能力が低すぎます。大きなWaveTable音源データ等もカード上に格納しなければならず、コスト的にも不利になります。 こうしてサウンドカードもPCI化が進み、クリエイティブ・ラボでもEnsoniq Audio PCI64やSB Live!シリーズ等をラインナップに加えてきました。
Sound Blaster Live!
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Sound Blaster Live!は97年秋のCOMDEXで発表されたEMU10K1(200万トランジスタ、1,000 MIPSの処理能力)サウンドチップを搭載している、現在シリーズ最上位のカードです。 Live!はクリエイティブ・ラボの初の本格的なPCIサウンドカードであり、プログラマブルなエンジンを搭載していることから、ドライバ次第で性能を向上させることができます。また、バンドルソフトや付属入出力カードの違い等から、いくつか製品バリエーションが有ります。 私が持っているのはデジタル入出力カードが付属していないLive! valueです。
- E-mu社EMU10K1(200万トランジスタ、1000MIPS)を搭載し、強力かつ多様なエフェクト
- 音質を考慮したカード設計。内部的には全て32bit処理
- ハードウェアWaveTable64音+ソフトウェア(ドライバの更新で音数は変化)
- SoundFontはPCのメインメモリを利用(2/4/8MB版付属。最大32MB)
- 4スピーカ出力対応、CDデジタル入力対応
- SB-LINKコネクタはなし(でもISA版SBとの互換性あり?)
- DirectSound/DirectSound3D/EAX 対応
等々機能的にはグッドなカードなのですが、私が気に食わない点としては、ゲームなどで時々ノイズが乗ることがある点でしょうか。 Linuxでの動作については、Linux日記でいろいろ実験してるので、ご興味がおありの方はどうぞ。
Ensoniq Audio PCI 64
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Ensoniq Audio PCIはクリエイティブ・ラボが買収したEnsoniq社のチップを使用したサウンドカードです。 その意味ではSound Blasterシリーズではありませんし、SoundFontには対応していません(2MB/4MB/8MB等の音源サンプルをHDDから読込む機能は付いてます)。 何故このカードに着目したかというと、Linuxで対応しているからです。 実はLinuxで使用できるPCIサウンドカードで、入手も容易なものというのはそんなに選択肢が無いのです(99年7月現在)。 お値段もお手頃ですし、機能的にも必要にして十分。 実は結構気に入っています。
- Ensoniq ES137xチップ搭載 (ES1370とES1371ではドライバも互換性が無い)
- ハードウェアWaveTable32音
- 音源サンプルはPCのメインメモリを利用(2/4/8MB版付属)
- DirectSound/DirectSound3D 対応
- アンプを搭載していない点は注意 (まぁその方が音質的には有利か...)
Sound Blaster AWE32
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クリエイティブ・ラボのSound Blaster 32&AWE32は、PC互換機の事実上の業界標準、Sound Blaster16の機能強化版です。 WAVEファイルなどPCM再生部分および内蔵のFM音源シンセサイザは、Sound Blaster16と同等の機能を持ちますが、外付けMIDI機器では一般的なウェーブテーブルシンセサイザも内蔵しており、MIDIの再生音質が飛躍的に向上しています。
AWE64でもボード写真を見たところ、SB16、E-mu8000、DSPなどが1チップ化されているみたいで、ボードサイズは小さくなっていますが、機能的にはAWE32とほとんど変わりません。 AWE64 = AWE32 + WaveSynth(ソフトMIDI)なのです。
- ウェーブテーブルシンセサイザとしてE-mu社のE-mu8000チップを搭載。16種類の楽器音を32音同時に再生可能。
- データのリアルタイムの圧縮/伸張、音声合成やサウンドエフェクトを可能にするAdvanced DSPを内蔵(AWE32のみ)
- SoundFontと呼ばれる規格にしたがった音色ファイルを、音源テーブルとしてボード上のRAMにダウンロードして使用できる。AWE32はボード上にRAMを512KB搭載。
- ボード上のRAMは30pinの同サイズのSIMM(80ns以上)を2枚搭載できる。最大で28MBのRAMを搭載可能
(16MB×2=32MB搭載できるが、仕様上28MBまでしか認識できない。残念ながらValueモデルは増設ソケットがないみたい)。- ソニー、フィリップスのデジタル機器の接続規格に沿ったSPDIF端子を持っているため、対応しているデジタル機器にクリアなデジタル音声で録音可能。
- 同社のMIDIドーターボード、WaveBlasterを接続することでMIDI再生能力を更に強化可能(WaveBlasterはSB16にも接続可能)。
- 同社のボイス・データ・FAXモデム、ModemBlasterと接続可能。
- 今時珍しいフルサイズISAカードなので、うまくとりつけられないPCもあるかも。
Sound Blaster AWE32の構造特に注目に値するのはSoundFontで、音源テーブルを簡単に交換できるので、GM、GS、MT32互換のMIDI音源として使用できます。 また、RAMを増設することにより、より大容量のSoundFontをダウンロードしてMIDI音質をアップグレードできます。
私の所有するAWE32はRAMを8MBまで増設し、E-muから購入したSoundFont CDに入っている8MB版のGM SoundFontを主に使用しています。 さらに従来はAWE64にしかなかったWaveSynth/WGも購入したので、もはやAWE64と機能面では同等です(カードの大きさなら間違いなく勝ち(^^;)。
Windowsでなく、LinuxでもAWE32を活用しています。 世の中にはスゴイ人がいるもので、しっかりとSoundFontまで使えるのです。 Linux日記で実験してるので、ご興味がおありの方はどうぞ。
AWE64にしか付属しなかったソフトウェアMIDI(Creative WaveSynth/WG)ですが、とうとうSB16、32、AWE32用にも発売されました。 もちろん機能的な制約はあり、SB16では単なるソフトウェアMIDIにしかならないようですが(といってもヘボいFM音源の音に比べれば雲泥の差ですが)、SB32やAWE32の場合はソフトウェアMIDIとしての機能はAWE64とほぼ同等になるようです。
Creative WaveSynth/WaveGuideの各コンポーネントに関する説明と、SB16などハードへのインストールの有無は以下のとおりです。
名称 | 機能 | SB16 | SB32 AWE32 |
---|---|---|---|
Creative WaveSynth | ソフトウェアによるウェーブテーブルシンセサイズ。 仮想MIDI機器となり、通常のMIDIソフトやゲームの効果音で用いることができる。 (当然、実際はPCM音源がなっているわけです) | ○ | ○ |
Creative WaveGuide | 物理モデル音源によるソフトウェアMIDIの部分で、Electric Pianoほか15の楽器をサポートしているようです。 | × | ○ |
Creative MIDI Instrument Mapper | MIDIの各楽器について、SB32、AWE32が持っているハードのMIDIとWaveSynth/WGのどちらを使うかを簡単に設定できるユーティリティです。 | × | ○ |
Creative Mixer | Sound Blasterに元々付属しているMixerをアップデートし、ソフトMIDIの音量、Reverbなどエフェクトの調整を追加します。 | ○ | ○ |
NetMeetingとかInternet Phoneを使うとき、古いトランシーバみたいに、こっちが話すときは向こうの声は聞こえないですか? それとも電話みたいにちゃんとお互い話をできますか?
電話みたいに話そうとすると「全二重通信」を行うことが必要です。 つまりマイクを通した録音と、相手の声の再生が同時に行われなくてはなりません。 Sound Blaster 16、Sound Blaster AWE32はハードウェアレベルでは全二重通信に対応しています。 しかし、Windows標準添付のドライバではこの機能が設定できません。 Creative Labsのホームページからダウンロードしてこなくてはなりません。 最新版ドライバをインストールし、「コントロールパネル」-「システム」-「デバイスマネージャ」で"Sound Blaster 16 Plug and Play"をみると、こんな感じになります。
ちなみに上のチェックボックス(Allow Full Duplex Operation)が全二重通信の設定です。 インストール時にはデフォルトでオンになっています。 私がオフにしているのは、DirectXを使用したゲームで音の再生が不安定になるという症状が出たためです。 まぁ通信をするときにはオンに設定すればいいですしね。
通常、外付けMIDI機器などではGMの基本的な楽器音データなど(ウェーブテーブル)をプリセットとして、ROMに搭載しています。 これらは当然、ROMなので書き換えはできません。
一方、AWE32、AWE64などがサポートしているSoundFontは、このウェーブテーブルをRAMにもち、必要に応じて取り替えることができます。 たとえば大容量のRAMを増設して、もっと音色の豊かなSoundFontをロードするとか、ViennaというSoundFontエディタで作成した、独自のSoundFontを使ってみるとか...(場面に応じてSoundFontを変えてくれるような対応ゲームもあるようです)。
このSoundFontにはバージョン1.0(拡張子SBK)のものと、バージョン2.0(拡張子SF2)のものがあります。1.0から2.0へは変換できますが、その逆はできません。
せっかくAWEを使っていても、SoundFontの存在は知らない人も結構いるようです。 このSoundFontは下記の方法で使用します。
OS | プログラム | SoundFont 1.0 | SoundFont 2.0 |
---|---|---|---|
DOS | AWEUTIL.COM | ○ | × |
Windows95 | AWECP32.EXE(AWEコントロールパネル) | ○ | ○ |
DOSモードのときにAWEによるGM、GS、MT32エミュレーションを可能にするには、DOS版ユーティリティAWEUTIL.COMが必要です。
このユーティリティはCreativeのホームページからダウンロードできるDOS/Win3.1用ドライバの中に含まれています。
ちなみにAWEUTILでは
C:> AWEUTIL.COM /EM:GM
みたいにパラメータを指定して、GM、GS、MT32エミュレーションを行います。
つまりこのとき、Windowsドライバのときと同様、SoundFontファイルを読み込んでいるのです。
ちなみに実際のそれぞれのファイルは以下のとおりです。
GMモード | :SYNTHGM.SBK |
GS互換モード | :SYNTHGS.SBK |
MT32互換モード | :SYNTHMT.SBK |
実際にAWEUTILを使うには、AUTOEXEC.BATの環境変数SOUNDで指定されたパスの下にSFBANKディレクトリを作り、そこに上の3つのSoundFontファイルを置けばOKです。 私は、AUTOEXEC.BATに SET SOUND = C:\TOOL\MMEDIA\CREATIVE と書いて使用してます。
私はSFBANKに、8MBのSoundFontファイルをSYNTHGM.SBKという名前で置いてます。
おかげでAWEUTILのロードにかなり時間がかかりますが...。
Windows95でSoundFontを使用するには、AWEコントロールパネル(AWECP32.EXE)が必要です。
Creativeのページからですと、「Tech Lab」−「Drivers & Patches」− 「Comprehensive FTP Site Index」−「Sound Blaster 16, AWE32, & SB32 drivers」− 「Drivers for Windows95」とたどると見つかるでしょう。 ダウンロードするファイルは、AWE32用最新ドライバとAWEコントロールパネルの2つです(ともに英語版)。 これらをダウンロードし、インストールしてください。
SoundFontを読むには、AWEコントロールパネルを実行し、「Synth」タブをクリックします。 最初はAvailable Synthの欄がGeneral MIDIになっていて、PathがC:\WINDOWS\SYSTEM\SYNTHGM.SBKになってますよね?
「Available Synth」をUser Synthにでもして、「Browse」ボタンを押し、読み込みたいSoundFontファイルを選びPathを変更します。
最後に「Apply」ボタンを押すと、これらの変更が実際に反映されます。
以後はWindows再起動後もきちんと変更したSoundFontが読み込まれるようになります。
以前、Cyrix社のPentium互換CPU、6x86ではAWE64が動作しないらしいという噂を聞きました。 対応パッチも一部で流れていたらしいのですが、本当に動作しないのでしょうか?
私がCyrix社のページで確認したところ、動作はするが、AWE64の一部の機能がIntelの非公式な命令セット(6x86は未対応)を用いている。現在のバージョンのインストーラはIntel純正のCPUでないと判別し、一部の機能をインストールしなくなってしまう。しかし、この影響を受けるのはMIDI Orchestratorなどごく一部のハイエンドMIDIアプリケーションだけで、ゲームや一般の使用には影響はない
というのがCyrix社の見解です。
先日、ヨシオカさんからいただいた情報によると、「6x86ではWaveSynth/WGだけがインストール時にはじかれる」そうです。 これはCyrix社の見解と一致します。 5月16日にCreative Labsから出た最新版のWaveSynth/WGでは「AMD K5 or later support」となりました。 結局、6x86(おそらく6x86MXも)はカヤの外ということなんでしょうか? そりゃWaveSynth/WGがなくたってハードの部分のMIDIは動作しますが、それじゃAWE64じゃなくてAWE32になっちゃうじゃん。
噂の6x86対応パッチなど、関連する情報をお持ちの方は教えてください。