私の仕事と計量経済

私が現在の会社でしている仕事は「調査・研究」、官庁や自治体、民間企業等からの委託調査でありまして、そういう意味では頼まれたことは何でもやる「何でも屋」であるわけですが、分野的に興味があり、仕事上関わりがあったりもするのが、計量経済分析です。

経済学は、現実の経済に起こる様々な事象の相互関係、その裏にある法則を研究し、それを政策に応用する学問です。 こうした法則がどのようなものであるのかについては、様々な学説、理念がありますが、こうした理論経済学だけでは、「為替レートが10%減価したとき輸出入にどの程度影響を与え、経常収支はどうなるのか」という問いに答えることはできません。 『計量経済分析』は、理論モデルに基づいて経済の動きを数量的に表現し、データを分析するものです。 計量モデルは、大学で多少経済学をかじった方ならおなじみの消費や投資に関する理論に基づいて消費関数、投資関数等の方程式を推定し、それらを接続する定義式を加えた連立方程式体系であるといえます。 現実の経済をモデル化したこの式体系に「為替レート10%減価」等のショックを与えることにより、経済にどのような影響を及ぼすかを具体的な数字で把握することができるのです。

しかし、モデルがはじき出した結果=真実ではありません。 モデルは単なる方程式体系であり、現実はそれほど単純なものではありませんし、そもそも経済理論が現実の事象のすべてを説明することはできないからです(うわ、そんな自己否定しちゃっていいのか?)。 とはいえモデルを使えば、政策効果がバッチリと数字で出てきて議論しやすいこと、その結果が現実をみる参考になることは確かでしょう。 などとえらそうにいってますが、私はまったくの浅学の徒にすぎず、「経済学者」などではありません。いわば門前の小僧なんですから(^^;

そんな私がとりあえず作ってみた計量経済等に関するページですので、いろいろと不備はあるかと思いますが、ご興味のある方はどうぞご覧になって下さい。 またお気づきの点等ある方は、jacobi@sorryihatespamjcom.home.ne.jpnospamまでご一報くださると幸いです。


計量分析ソフト

さて計量経済分析を行うにあたって、必須なのが計量分析ソフトです。 パソコンの能力が進化してきたおかげで、計量分析もパソコンレベルで行えるようになってきました。 とはいえExcelなど表計算ソフトではごく単純な回帰分析ぐらいまで。 計量分析・統計分析を本格的にするには専用のソフトがやっぱり必要です。

計量分析ソフトには各種あり、それぞれ得意とする分野が違います(といっても、分析者の好みでどのソフトを使うかが決まってしまうことが多いですが(^^;)。 私が主に使っているのはQMS社のEViewsですが、場合によってはTSP、SASなどを使うこともあります。 私は使ったことはありませんが、その筋では有名なソフトも参考までに紹介しておきます。

English SiteEViews
かつてパソコンの能力がまだまだ低かった頃、TSPの簡略版がパソコンに移植されていました。このmicroTSPをもとに各種機能を強化し、グラフィカルなユーザーインターフェースも取り入れたソフトがEViewsです(もちろんコマンドラインでの操作も可能)。分析結果をすぐにグラフで確認できますし、表計算ソフト等との連携にも優れています。 私の作成したMKIマクロ計量モデルでもこのソフトを利用しています。
EViewsの使い方:実践編なんて書いてみました。
EPA originalSIGMA
経済企画庁のメインフレーム(等)で動作する計量分析ソフト。推定機能が豊富なことは無論ですが、モデルの式体系の整形出力やシミュレーション時の自動・手動定数項修正等々、分析者にとっては痒いところに手が届くような様々な機能を持っています。
English SiteTSP
メインフレームからパソコンまで、様々なプラットフォームに移植されている代表的な計量分析ソフトがTSPです。時系列分析、モデル構築を得意とし、回帰分析のコマンドも豊富。
English SiteSAS
Japanese SiteSAS Japan
メインフレームからパソコンまで、各種プラットフォームに移植されている汎用的な統計分析ソフトです。各種用途に応じたオプション(別売)が用意されています。基本システムだけではちょっと計量分析には向かないかな?
English SiteFair-Parke
Yale大学で開発されたフリーの計量分析ソフト、Fair-ParkeのFORTRANソース、実行バイナリ、アメリカのマクロモデルが入手できます。フリーといっても方程式の推定、モデルのシミュレーション、自動定数項修正等、機能は一通り揃えており、合理的期待の入ったモデルも扱うことができます。 弱点としては、DOSプロンプトで動作するのでCUIのみ(これはまぁ別に構いませんが)、他のソフトとのデータ連携も考慮されていない点でしょうか。 この部分は自分でExcelマクロを組んだので今後触る時は楽になりました。
English SiteGAUSS
強力な行列演算機能を持つ統計分析用ソフトウェアです。自社だけでなくサードパーティからも各種アドオンが販売されています。FairTaylorというアドオンをインストールすると、合理的期待形成モデルも構築可能です。
English SiteTROLL
TSP等と同様、非常に歴史のある計量分析ソフトがTROLLで、IMFのMULTIMODをはじめ、各国の中央銀行や大学、国際機関の研究所で使用されているようです。 TROLLもメインフレームからUNIXワークステーション、PCまで幅広いプラットフォームに移植されています。Windows版のPortable TROLLはGUIも備えているようです。
English SiteSHAZAM
様々な回帰手法による分析が可能で、CHOWテスト、カイ二乗検定など各種検定も可能なソフト(らしい)。
English SiteRATS
時系列分析に関連する機能が特に充実したソフト(らしい)。

計量分析を行うにあたっては、当然データが必要です。 大量のデータを自分の手で入力・更新するのは大変ですが、最近はインターネットからもかなり集められるようになってきました。

Japanese Site内閣府 経済社会総合研究所 (旧経済企画庁 経済研究所)
国民経済計算(SNA)など
Japanese Site日本銀行
金利、マネーサプライほか金融関係データ
Japanese Site財務省 (旧大蔵省)
通関統計、法人企業統計、財政収支など
Japanese Site総務省 統計局 (旧総務庁 統計局)
家計調査や労働力調査、消費者物価指数など
Japanese Site経済産業省 (旧通商産業省)
鉱工業生産指数等
Japanese Site国民経済研究協会
EViewsおよびFairで開発されたモデルが公開されています

Return to topTOPページに戻る