上級クロックアップその1 - 高クロック化

上級クロックアップではマザーボード自体の改造まで行います。 メーカー・ショップの保証など絶対に受けられなくなるので、内容の理解できない人、ハンダ付けに自信がない人は試さない方が無難です。 それに完全に規格外の動作をさせなくてはならないので、CPU、メモリ、チップセットなどの冷却を一層強化しなくては正常動作は見込めないでしょう。

ニフティサーブのエクステンダーフォーラム(FEXT)では、2段ペルチェ(2枚重ねれば理論上2倍の温度差を稼げるためです)にしたり、より効率の良い冷却を追求した水冷油冷、さらには炭酸ガス冷却など、もはやパソコンとは思えないような冷却方式が実験されています。

私は一応「ケースを閉めれば普通のパソコン」の姿にとどめておきたいし、資金繰りも苦しいので(今のところ)これ以上はやるつもりはありませんが。


クロックアップの基礎知識で説明したように、PCのマザーボード上ではCPUへの50/60/66MHzをはじめ、FDD、タイマーなどへそれぞれ異なったクロックが存在します。 これは、基準となる14.318MHzの水晶発振子とそこから各種クロックを作り出すクロックチップによって供給されています。

つまりPCを限界以上で動作させるためには、14.318MHzの発振子を殺してさらに高いクロックの発振子を接続することで、CPUへの供給クロックを規定以上にあげればよいわけです。 例えば133MHzのCPUはクロックアップ対策のため、インテルが2倍速を超える設定はできないようにしているといわれています。 そのため、通常では66x2= 133MHzを超える設定は不可能ですが、外部クロックを90MHzにできれば90x2= 180MHzで動作させることができます。 まぁ外部90MHzで動作すればの話ですが。

また、注意すべき点としては14.318MHzの発振子を高クロックのものと取り替えると、リアルタイムクロック(システムの時計)、フロッピー、ISAバスなども当然クロックがあがってしまうため、正常に動作しなくなります。 そのため、自分でこれらの機器のクロックを作り出して供給する仕組みを作らなくてはなりません。 またPCIバスの上限は33MHz(66MHzの1/2)です。 外部クロックを66MHz以上にすると、PCIバスも規定を超えるため、SCSIカードやビデオカードなどが動作しなくなることがあります。

私の使用していたASUS P55TP4XE rev.2.4ではIC Works W48C60というクロックチップが使われていました。 このクロックチップは以下のようなピン配置をしています(多分)。 他のマザーボードの場合には違うチップが用いられているかもしれないですし、同じTP4XEでもリビジョンが異なると細部が異なっている可能性があります。 改造の前には慎重にチェックをしてから、実際の作業にとりかかって下さい。

48C60 pin

(基準水晶が14.318MHzの場合)

これをクロックアップするには次の2つのステップを踏まねばなりません。

  1. 14.318MHzの水晶発振子を取り外し、より高クロックの水晶発振子に取り替える
  2. クロックチップからISAバス(#27, #28)、キーボード(#25)、フロッピー(#24)への供給端子を切り離し、それぞれ元のとおりのクロックを供給する回路を作り、接続する。

1.基準水晶を交換する

マザーボード上に「14.31818」などと数字の書かれた水晶発振子の足を、ハンダこてであたため、基盤のパターンを損傷しないよう注意して取り外します。

うまく取り外すことができたら、新しい発振子を取り付けます。 私は19.8MHzの水晶と交換したので、通常は外部60MHzの設定を意味していたジャンパが80MHzになるわけです。

このとき、ピンソケットをとりつけると様々なクロックの水晶と交換が簡単になるので便利です。 また、この段階で電源を入れてテストをするときには、当然フロッピーは動作しませんし、ハードディスクや拡張カードなんかも壊れるかもしれません。 できるだけ安くて大事なデータが入っていないハードディスクをつないでテストしましょう。

ここまでは私も成功しました。 テスト時には2倍速設定にしていたので、83×2=166MHzというクロックで動作していたと思われます。 元の水晶を引き抜くときがやや不安ですが、よほど不器用な人でなければここまでは大丈夫だと思います。


2.フロッピーなどへ元のクロックを供給する

水晶を交換することにより、通常は設定できなかった高い外部クロックが設定できるようになりました。 しかし、これだけではFDDやタイマーへのクロックもあがってしまっているため、フロッピーは使用不能になり、時計もデタラメになってしまいます。 これを修正するには、クロックチップからFDD、タイマーなどCPU・PCIバス以外へのクロック供給部分を切断し、正しいクロックを生成する別の回路を接続しなければなりません。

ここがとても難しいところです。熟練したハンダ付け技術、大胆かつ迅速で、慎重な作業が要求されます。 クロックチップの足の間隔は1mmにも満たないのに、必要な足だけを切り離し、さらに自作回路からの結線をマザーボードに接続しなければなりません。

私はここで失敗しました(オイここまでひっぱっといて、オチはこれか!?)。 私の場合は、溶けたハンダをICの足の間に落とすという痛恨のミスをやらかしてしまったので、ハンダ吸い取り線で取り除いたときに熱でICが死んだものと思われます。

え? 失敗したくせに頑張ってこんなに説明を書いてどうするって? まぁいいじゃないですか。 この恥ずかしい教訓をみなさんに活かしてもらうということで。


上級クロックアップその2 - 電圧アップ

上級クロックアップその1では、マザーボードを改造して規定以上の外部クロックを実現しました。 Pentium133MHzは通常2倍速設定しかできませんが、外部クロックを90MHzにできれば180MHzで動作させることが出来るのです。 ただし、冷却を強化するだけではこのような高クロックで動作する可能性はかなり少ないです。 同時にCPUの動作電圧を上げると効果があるといわれています。 (電圧を上げるとさらに発熱が増すので、十分な冷却能力が必要となるでしょう)

さて、私もASUS P/I-P55T2P4 rev.3.1を所有している友人が、テストを繰り返して3.91Vに設定し、Pentium200MHzを225MHz駆動させることに成功したことにつられて、実験してみました。 私のマザーボードは彼と同じT2P4ですが、リビジョンが3.0ですので抵抗の配置等が少々異なっていましたが、電圧設定ジャンパのSTDが714kΩで3.36V、VREが309kΩで3.47Vとなっていました。

そこで、以下のような加工を行いました。1番のステップで抵抗を取り外すときには、まわりのパターンを傷つけないよう注意して行って下さい。他の部分を壊してしまうとジ・エンドです。 2番のステップはなかなかお勧めです。 こうすると簡単にユニットを取り外して抵抗を取り替えることが出来ますし、正常に動作しない場合は、VRE側に設定することで簡単に復帰できます。 でも、普通なら切断するのはVRE側でしょうね。 逆にしたのは単なる趣味です。

  1. STD側のジャンパから伸びている714kΩの抵抗を慎重に基板から取り外し、そこを5mmほどに切った銅線をハンダ付けして、直結
  2. ジャンパとちょうど同じサイズだった2ピンの電源コネクタを使い、自作した可変抵抗ユニットを接続

さて、この状態で様々な抵抗をつなぎ、CPU電圧と抵抗の関係を推計してみました。

T2P4 voltage

この実験結果から、私は60kΩの固定抵抗と200kΩの半可変抵抗を用いて、3.5V〜4.2V程度に電圧を設定することが出来るようになりました。

このへんのところは個別のマザーボードによって異なりますし、残念ながら私には詳しくはわからないので、かの有名なニフティサーブのエクステンダーフォーラム(FEXT)なんかを丹念にチェックしてみてください。


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