初級クロックアップでは、ジャンパスイッチの変更によるごく簡単なクロックアップについて説明しました。 しかし、これだけでは大幅なクロックアップは望めませんし、安定動作するとも限りません。 さらなるクロックアップを図るには、いくつかのポイントがあります。
近頃のパソコンでは、CPUその他にヒートシンクや空冷ファンが取付けられており、CPUの発する熱を放出しやすくしています(メーカ製PCを使ってケースを開けたことない人は知らないかも)。 とはいえ、メーカーとしてもあまりコストをかけられませんから、あくまでも「規定通りに動作しているときの熱を放出するファン」でしかありません。 ですから、冷却能力を高めるために、まずは「より大きく効率の良いCPUクーラーを装着すべし」です。 秋葉原のショップあたりでも、「SANYO製CPUクーラー」などは良く冷えると評判です。 少なくとも、もともと付いていたヒートシンクよりは安心でしょう。 また、マザー改造(あるいは規定外の設定を持つマザー)によって外部クロックを規定外に上げている場合には、チップセットやメモリ、グラフィックカード上のチップにも付けるといいかもしれません。
このような空冷システムでも十分だと思いますが、より冷却能力を高めるために、マニアな人々が好んで使うものに「ペルチェ素子」があります。 「ペルチェ素子」というのはTE素子とも呼ばれる代物で、電流を流すと熱を一定方向に移動させる性質があり、2つの面の間に温度差を作り出す素子なのです。 強力なものを利用すると電子冷蔵庫まで作れるらしいです。
ペルチェはうまく使えば、かなり冷却力がありますが、扱いが結構難しいようです。 「熱を移動させる」のだからCPUを冷却する能力が高いというのは、逆を言えばヒートシンクを暖めるということです。 ペルチェは「温度差を作り出す」のですから、ヒートシンクが暖まってしまうと冷却効果が低くなってしまいます。 CPUから奪った熱とペルチェ自身が発する熱を放出しきる為には、巨大なヒートシンク、強力なファンが必要で、冷却能力を満たすために水冷化されることも珍しいことではありません。
そんなこんなで、ようやく排熱がうまくいったと思ったら、今度は冷え過ぎて結露することもあります。 こいつは非常に深刻な問題で、下手すると結露でショートし、大事なCPUだけじゃなくマザーボード等まで駄目になってしまいます。 この問題を完全に回避するには、CPU温度を監視して充分に低い場合にはそれ以上冷えないようペルチェに供給する電圧を変化させる仕組みが必要で、これがいわゆる「ペルコン」(ペルチェ・コントローラ)です。
秋葉原のパーツショップ等で時々ペルチェクーラーが販売されていますが、ろくなものがありません(一般論です。特定の製品を中傷するものではありません)。 元々吸熱量の小さい素子を用いているか、あるいは結露でクレームがつくのを恐れて電圧を低くしているのでしょう。
私もいろいろと実験して、SANYO製のPentiumPro用大型ヒートシンク&ファンを少々加工して固定し、秋葉原の秋月電子通商で\2,000-で販売していたMax吸熱量80Wのペルチェ素子を組み合わせた簡易ペルチェ冷却を試したことがありますが5V程度の電圧が限度でした。 本格的にペルチェを生かすにはよほど巨大なヒートシンク&ファンか、水冷化が必要といえるでしょうね。
ちなみにペルチェ素子は吸熱面と放熱面がありますので、吸熱側をCPUサイドに、放熱側をヒートシンクに向けて装着しないと冷却どころか、熱暴走誘発ユニットになってしまうので注意しましょう。 そのほかにも取り付ける際のコツがあります。
このCPUIdleはAndreas Goetz氏作のユーティリティで、Windows95/98上でCPUをソフト的に冷却します!
通常、PCの電源が入っている時でも、CPUは常に活動しているわけではありません。 キーボードやマウスの入力、ハードディスクなどの外部機器からの入出力要求(割込み)が来るまでの間は、単なる待ち時間にすぎません。 LINUXやWindowsNTではこの待ち状態(Idle)のとき、CPUに「HALT命令」を送り、CPUを一時停止状態にします(割込みが入ると直ちに復帰。ハードウェアで処理されるので、パフォーマンスにもほとんど影響を与えません)。 HALT状態のCPUはなにせ停止しているもんですから、かなり発熱が抑えられます。 特にHALT時に節電モードに入るCyrixやAMDのCPUでは、Intel系CPUよりもさらにこの効果が高いのです。 ところがなぜかWindows95では、このようなマネができません。 Microsoftは「Windows98ではサポートする」といっているようですが、現在のβ版にはないようです(結局、ACPIモードでなら利くらしい)。
このCPUIdleは、最も低いプライオリティでひたすらHALT命令を実行するプログラム(多分)ということなんでしょう(現にシステムモニターでみると、常にCPU稼働率が100%にみえる)。 付属のドキュメントによれば、AMD K6でも7度以上CPU温度を下げる効果が確認されているようです。
これが本当なら、こんなにオイシイ話はありません。 私もさっそく実験したところ...、おぉ! 確かにWindowsを起動後、放っておくと温度がジワジワ下がっていくではありませんか! 通常よりも電圧を高くしている私のK6で、完全空冷なのに気温+5℃程度とはかなりグッドです。 お?また温度が上がっていく?あ、スクリーンセーバが動き出したせいか。 なるほど、CPU稼働率が高くなると効果が薄くなるのは当然ですね。 平均的にはノーマル−5℃ぐらいでしょうか。
HDBENCHなどでテストしてみても、確かにパフォーマンスへの影響はほとんどなさそうです。 こいつは「買い」だ!
これはあまり説明はいらないですね。 容量の大きい電源を用いて、フィルター付きのコンセントを使い、アースもきちんとしましょう。 3Pのグランド付きACコンセントがあるなら、その方がいいですね。
また、パソコンを接続しているコンセントには他の電気機器をつなげない方がベターです。 とくに、ドライヤーとか交流モーターを用いているものはヤメましょう。
ちなみに、ハードディスクを何台もタコ足でつないでいると、起動時に同時にモーターがまわるために一時的に電圧不足に陥り、暴走することもあります。 電気を多く消費する機器はできるだけ別々の内部電源コネクタから電気をとる方がいいでしょう。 また、電源コネクタをタコ足にしなくてはならないぐらい内部機器が増えてしまったら、電源の容量アップをするべきです。
私の場合は、APCのBK Officeというサージ抑制のフィルターが付いていて、コンセントも複数付いている簡易無停電電源を使用しています。 外側は結構イケてると思うのですが、中の電源ユニットは最初から付いていた250Wのものです。 そろそろ電源ももう少し強力なものに変えたいところですが、そうするとATX化を図りたくなるし、そうなるとケースも買わなきゃ...。 難しいところですね。
PCのマザーボード上では12Vや5V、3.3V、はたまた最近のCPUコアでは2.1Vなど様々な電圧が供給されています。 これらの電圧を変換して生成するレギュレータには、エリミネータ型とスイッチング型があります。 後者には変換効率が高い、発熱が少ない、外部の電源変動の影響を受けにくいなどのメリットがあるので、できればこのタイプの電源を搭載したマザーボードを選ぶべきでしょう。 電源が不安定ではPCの安定動作はおぼつきません。 まして電圧を定格以上に上げたりすれば、なおさらです。
最も簡単な電圧の強化法は、マザーボードのジャンパを変えるだけです。 Pentium Classic(P54C, P54CS)の場合定格は3.3Vですが、市販のマザーボードでは3.6V(VRE)設定ができるものが多いです。 VREにした方が電圧がやや上がるので、その方がよいかもしれません。
しかし、電圧を上げると素子の発熱も増すので、冷却能力の強化とセットでやる必要があります。 また、CPUだけでなくチップセットやキャッシュメモリなど発熱の多いところには冷却対策をほどこすとより安心です。私もチップセットにはヒートシンクを取り付けています。
それ以上の電圧アップには、マザーボードの改造が必要です。 このあたりの話は上級クロックアップその2でとりあげます。